研究概要 |
目的と意義:HIV-1を含むレトロウイルスの遺伝子は、逆転写過程を経て、宿主染色体に組み込まれる。このインテグレーション過程は、ウイルスpol遺伝子産物のひとつ、インテグレース(IN)により触媒される。本研究では、INの無細胞アッセイ系による研究結果を基に、IN及びLTR末端シークエンス(att)の高保存領域に変異を導入し、その機能をウイルス感染系を用いて解析した。 材料と方法:HIV-1(pNL43)INの酵素活性中心(D,D35E)及びN末端に存在するZn^<2+>フィンガー(HHCC)モチーフ及びLTR末端に存在するIN認識部位(attsite)の高保存領域に点変異もしくは欠損変異を導入した変異クローンを作製した。尚、遺伝子発現マーカーとしてluciferase遺伝子をNef領域に挿入し、pseudotypeウイルス作製のため、env領域を欠損させた各変異ウイルス(pNL luc △BglII)のpseudotypeウイルスを作製し、single-round感染系を用い解析した。 結果と考察:(1)IN活性中心のD,D35Eモチーフ及びU3末端の10bp(3' attsite)は、ウイルス感染後のインテグレーションに必須な領域であり、点もしくは、欠損変異により、インテグレーション効率は95%以上低下した。しかし、3'attsite末端に存在し、全てのレトロウイルスに保存されているCAジヌクレオチドに点変異を導入したところ、そのインテグレーション効率は野生株の約40%保持していた。(2)各変異株のインテグレーション効率とウイルス遺伝子発現には強い相関性がみられ、インテグレーションがウイルス遺伝子発現に必須の過程であることが示された。(3)INのN末端に存在する高保存HHCCモチーフの点変異株は、3種いずれも感染後のウイルスcDNA合成が、野生株の2%以下と著しく低下した。Endogenous RT法及びWestern blotting法による解析から、これらの変異株のRT酵素活性及びGag-Polプロセッシングは正常であったことから、INのZnフィンガー領域の逆転写以前の過程(assembly,uncoating 等)における重要な役割が示唆された。
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