研究概要 |
目的と意義:HIV-1を含むレトロウイルスの遺伝子、逆転写過程を経て、宿主染色体に組み込まれる。このインテグレーション過程は、ウイルスpol遺伝子産物のひとつ、インテグレース(IN)により触媒される。したがって、インテグレーションに関する研究はあらたな抗HIV-1阻害剤開発においても重要である。本研究では、INおよびその基質であるウイルスDNALTR末端領域(att site)に変異を導入したHIV-1を作成しウイルス複製における各変異の影響を調べた。 材料と方法:INの酵素活性中心を含む高保存アミノ酸およLTR末端領域にに点変異あるいは欠損変異を導入した変異HIV-1クローンを作製した。各変異の解析にあたっては、luciferaseを挿入したenv欠損クローン(pNLlucDbg)を用いた、single-round感染系により行った。 結果と考察:INの酵素活性中心(D,D35Eモチーフ)およびLTR U3,U5の両末端10bpは、HIV-1インテグレーションに必須領域であり、点もしくは欠損変異導入により、インテグレーション効率は、野生株の効率の0.5%以下にまで低下した。各変異株のインテグレーション効率とウイルス遺伝子発現には強い相関性が認められインテグレーションがHIV-1の遺伝子発現に必須の過程であることが示された。上記で決定された3'および5'末端の各att部位(11bp)を入替えたmutantはほぼWTレベルのインテグレーション効率をしめしたことから、この領域のIN認識における十分性およびINの各unit分子がLTR両末端を独立に認識していることが示唆された。このことは、ウイルスDNAの協調的組み込みにおいてHIVINが二量体以上で機能していることを示唆している。
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