本研究は、組換えEBウイルス(EBV)を用いて新しいEBV持続感染系を開発し、このウイルスによる発がん過程のモデルとすることを目的とする。研究計画は二つの部分に分けられ、まずすでに開発されたTリンパ球における持続感染系を解析し、引き続いて新しい組換えウイルスを作成し、上皮細胞における持続感染系の開発を行う予定である。 平成8年度は研究計画の前半部分として、我々が開発したEBV持続感染MT-2細胞におけるEBV遺伝子発現が詳しく解析された。その結果、このMT-2細胞ではEBNA1、LMP1などのEBV遺伝子発現が認められたが、EBNA2の発現は認められなかった。これはlatencyII型に近いパターンであり、実際のヒトT細胞リンパ腫におけるEBV遺伝子発現と類似している。またEBV複製サイクルの引き金となるBZLF1を始め、BRLF1、BHLF1、BSMLF1、BMRF1、BALF1など多くの初期遺伝子の発現が認められる点は、Bリンパ球における持続感染系には見られない特徴である。一方MT-2細胞に元来持続感染しているヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-I)に関しては、EBV感染後も持続感染を続けることが示され、その遺伝子発現には変化が認められなかった。現在HTLV-IがEBV遺伝子発現に影響を与える可能性に関して実験中である。
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