新しいEBウイルス持続感染系の開発

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08670351
• 研究機関: 日本大学
• 研究代表者: 藤原 成悦 日本大学, 医学部, 講師 (30173488)
• 研究分担者: 小野 魁 日本大学, 医学部, 教授 (30004675)
• キーワード: EBウイルス / 持続感染系 / 相同的組換え / MT-2

研究概要

本年度は、昨年度に引き続きEBウイルス(EBV)持続感染MT-2細胞におけるウイルス遺伝子発現が解析された。同細胞におけるEBV遺伝子発現の特徴を知るためには、他のタイプの細胞株、特にB細胞株に同じ構造の組換えEBVが持続感染した場合と比較する必要がある。そこで組換えEBVが持続感染しているヒトB細胞BJABおよびLouckes中のウイルスDNAの構造をサザンブロット法により解析しMT-2細胞内のものと比較したところ、これら3細胞株由来のウイルスはいずれもEBNA3C遺伝子内にマーカー遺伝子が挿入されたものであることが確認された。つづいてウエスタンブロット法、免疫化学染色法、蛍光抗体法、ノーザンブロット法、RT-PCR法により、各細胞株におけるEBV遺伝子発現を比較したところ、MT-2細胞においてのみ複製サイクル初期遺伝子の発現が認められたことから、同細胞においては特にEBVの複製サイクル初期遺伝子の発現が生じやすいことが示唆された。今後は、なぜMT-2細胞において初期遺伝子が発現されるのが、同細胞にすでに感染しているヒトT細胞白血病ウイルス1型の影響も含めて解析を進める予定である。
当初の予定では、EBVリセプター遺伝子を導入した上皮細胞株などにおいても持続感染系を作製することを目的としていたが、この点は今後の課題として残されている。

研究成果

• [文献書誌] Masami Takei: "Detection of Epstein-Barr Virus encoded small RNA 1 and latent membrane protein 1 in synovial lining cells from rheumatoid arthritis patients" International Immunology. 9. 739-743 (1997)
• [文献書誌] Dai Iwakiri: "Antigenic variation of the Epstein-Barr virus nuclear antigen EBNA1 as revealed by monoclonal antibodies" Virus Research. 50. 139-149 (1997)
• [文献書誌] Shigemasa Sawada: "Soluble CD23 levels and their correlation with erythrocyte sedimentation rate and with copy number of Epstein-Barr virus genome in rheumatoid arthritis patients" Clinical Rheumatology. 16. 635-636 (1997)
• [文献書誌] 藤原成悦: "Tリンパ球株における実験的EBウイルス持続感染系の確立と解析" 日本臨床. 55. 416-423 (1997)
• [文献書誌] Yasuko Nagatsuka: "Establishment of characterization of an Epstein-Barr virus-transformed cell line, KM/C8,from a patient with infantile sialic acid storage disease(ISSD)" Biochimica et Biophysica Acta. (in press).
• [文献書誌] Hiroyuki Nakamura: "Epstein-Barr virus-infected human T-cell line with a unique pattern of viral gene expression" International Journal of Cancer. (in press).