研究概要 |
日本脳炎ウイルス(JEV)のエンベロープを構成する2種の糖蛋白質(prM,E)は、ER膜においてウイルスポリプロテインから宿主のシグナラーゼによる切断を受けて作成され、安定なヘテロダイマーを形成し細胞内を輸送され細胞外へ放出されることを我々は明らかにしてきた。平成7年度はこの複合体形成とその細胞内輸送に必要なprM,Eの領域について解析を行った。 1、PrMのC末端を4アミノ酸以上欠失させターン構造を喪失させた変異体を細胞内でEと共に発現させたところ、細胞内でE、prMの安定な発現があるにも関わらず細胞外へのエンベロープ蛋白質の放出が強く抑制された。11アミノ酸の欠失によってEが共存するにも関わらず細胞内でprMが不安定となり複合体形成が少なくなること、さらに24アミノ酸の欠失によってprMの安定性は回復し複合体も安定に存在するが細胞外へのエンベロープ蛋白質の放出の抑制は回復しないこと、C末端63アミノ酸の欠失によってMの領域をほとんど除くと複合体形成がおこらなくなることが明らかとなった。 2、PrMのN末端から51番目あるいは78番目のチロシンをロイシンに置換した変異体は細胞内でEと複合体を形成しなくなり細胞外へもエンベロープ蛋白質の放出がみられなくなった。43番目、75番目のチロシンをロイシンに置換した場合は変化はなかった。51番目を78番目のチロシンは複合体を認識するモノクローナル抗体(NO3)のエピトープ形成に関わっていると考えられる。 3、EのC末端もPrMと同様に欠失させたところ5アミノ酸の欠失までは変化はなかったが、15アミノ酸の欠失によって複合体量が減少し細胞外へのE,prMの放出も強く抑制された。 以上のことからE、prMのC末端に存在する疎水性の領域はER膜へのトランスメンブレンドメインと考えられるか、安定なprM、Eの複合体形成と細胞内輸送にこの領域の2次構造が関与することが示唆された。またprMのC末端の領域のみならずのN末端の高次構造が複合体形成に重要な意義を持つことが示唆された。
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