1、HCV遺伝子発現系の構築:HCV遺伝子を動物細胞で効率よく発現させるために、組み換えワクチニアウイルスおよびアデノウイルスを使用した。さらにスイッチング発現のためにCre/loxPシステムにHCV遺伝子を組み込んだ発現ベクターを構築した。 2、HCV蛋白質の発現:培養細胞でHCVcDNAからHCV蛋白質を発現させモノクローナル抗体で染色した。共焦点レーザー顕微鏡下で観察するとコア蛋白質は細胞質と核の両方に局在した。免疫電顕でも同様の結果だった。E1、E2は細胞質にのみ存在した。さらにマウスを免疫して得られた抗コアモノクローナル抗体は3種類にわけられ、細胞質コア蛋白のみを染色する、核内コア蛋白のみを染色する、または両方同時に染色するものが存在した。さらに細胞質内と核内のコア蛋白の構造変化を知るためにHCV蛋白を強制発現させた培養細胞を分画しコア蛋白の分子量を比べたが、すべて21kdで差はなかった。また、コア蛋白質の成熟過程を解析すると23kdと21kdのコア蛋白が存在することがわかり、HCV感染患者血清中のコア蛋白と比較して21kdのコア蛋白がウイルス粒子を構成していると考えられた。 3、コア蛋白質の機能解析:コア蛋白質を構成的に発現するCHO細胞はコントロールに比べて細胞増殖が遅延する傾向を示した。さらにコア蛋白質の培養細胞における持続的な発現がプロモーターに依存することがわかった。 4、NS3の機能解析:NS3を構成的に発現する線維芽細胞は増殖を速める傾向が見られた。しかし、スイッチング発現系での解析では有意な差は見られなかった。 5、IMY細胞を用いた試験管内HCV感染系でのHCV蛋白質の解析:HCVが感染可能なIMY細胞にHCV遺伝子を組み込みHCVの全領域の蛋白質の発現に成功した。この細胞を利用して従来培養系では低複製効率を示すHCVの複製増強を試みる。
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