研究概要 |
血清中のレクチンの一つのマンノース結合蛋白(MBP)は、マンノース等の糖鎖を持つ病原体に結合後、補体系を活性化してこれらを殺すことにより、生体防御において重要な役割を担っている。MBPによる補体活性化において血清中でMBPはCls様のセリンプロテアーゼのMASPと複合体を形成しており、MBPが糖鎖リガンドに結合すると、MASPによりC4,C2の分解反応が起こる。このようなMBP-MASPによる補体活性化は第三の補体活性化経路としてレクチン経路と呼ばれている。私は、MASPに分子量22、000の蛋白(P22)が結合していることを見出した。本研究はこのP22の構造と機能を解析して、レクチン経路の活性化機構を解明を行うことを主目的とした。一年目の得られた成果は次の通りである。 1)P22のN末端部分アミノ酸配列をもとにcDNAクローニングを行い、P22の全一次構造を決定した。その結果、P22はMASP,Clr,Clsに共通にあるインターナルドメインとEGFドメインを持つことが判った。最近、デンマークのオ-フス大学のグループは、我々が明らかにしたMASP(MASP1)とは異なる構造をした分子量約80、000のMASP(MASP2)がMBP画分にあることを報告した。P22とこのMASP2のN末端部分アミノ酸配列は完全に一致した。しかし、P22のcDNAにはポリAシグナルがあることから、P22はMASP2の分解産物ではなく、splicing variantであると推定された。 2)MBPは分子量が異なる様々な分子量として血清中に存在するが、抗体を用いて調べたところ、MASP1とP22は大部分のMBPと結合して複合体が形成しているが、MASP2は限られた分子量のMBPとのみ複合体を形成していることが示唆された。 3)MASP1に対するモノクローナル抗体を作製し、ELISA法を確立した。
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