研究概要 |
医学統計学の教育は公衆衛生学や保健医学などの関連科目の僅かな時間枠で講義を行っているのが現状である。しかしパッケージソフトの普及とともに医学論文で使用される統計手法の種類や量は増加している一方で、その使われ方では誤用も目立ち、結論が異なることも少なくない。本研究はその観点から1987年-1996年に亘る10年間における国内医学学術雑誌33誌と欧文医学雑誌2誌(The Rancet,N.E.J.M)を対象にして総説、報告、資料を除く約3,000論文について統計手法の種類、使われ方お呼び誤用のチェックを行い医学教育での統計学のあり方を考察した。総計手法が使われた割合は50%弱で近年増加の傾向にある。手法は、記述統計を除いた解析的手法だけで45種類を越え、国内で頻度の高い手法はt検定、相関と回帰、x^2検定が3大手法であった。その誤用で多い例はsamplingであり、次いで母集団と標本の混同、無作為抽出が怪しい標本例、対照の欠落など解析以前の問題がみられた。t検定では、対応の有無の記載がない、当分散の検定を行い、必要な場合にウエルチの方法を使う論文、約6%しかなかった。x^2検定では、約半数の論文で適切ではなく誤用の内容は、セルの中の出現度数の数が少なく、期待度数が5以下の場合、順序データでマンホイットニ-の適用が適切である例も多い。相関分析では連続量データでなはいものをピアソン相関係数を用いている例が多かった。因子分析では累積寄与率が低いのに、因子の潜在構造の意味付けを行っている例がみられた。一方、NEJM,Rancelの最近の1年分の対象となる論文数は700編、その中で統計解析手法の使われた論文の占める割合は67.9%であった。手法の種類は44でその中で使われた頻度の高い解析手法の種類の上位をあげると、x^2検定、t検定、コックス比例ハザードモデル、カプラーマイヤー、オッズ比、ロジステックモデルであり、手法において、我が国との比較で使用頻度に大きな差が認められたが誤用の割合は少なく今後の医学教育における統計学の位置づけの課題として独立した単位を設けること、医学統計学の講義、演習時間の増加そして専門家の育成を図ることがあげられる。
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