本年度は、データタの最終的クリーニング及びデータの分析を行った。さらに、これまで学会発表・論文発表を行って.きた文献に基づき、最終的な論文を作成した。論文の内容は、肺癌と粉じん暴露及びじん肺症の関係、対照群にがんの死亡例を用いたことに関する評価、及びそれから必然的に生じる「粉じん暴露及びじん肺症と肺癌以外の癌との因果関係」についてである。また、論文は作業関連性疾患と職業病についての考え方の整理や、医学における因果関係の推論についての整理についてもまとめた。さらに、この間に「シリカ曝露と肺癌」について国際的になされてきた議論についても整理した。 研究デザインは症例対照研究で、1地域の1986年から1993年の間に40歳以上で死亡した全男性症例を分析対象とした。症例は肺癌症例とし、対照群は大腸癌と粉じん暴露との関連が報告されていないその他の癌とした。対照群として当初は胃癌・肝癌・また食道癌等も予定し、曝露情報も収集していたが、これらの癌はシリカ曝露と関連しているのではないか、とする報告が国際的になされてきたので、対照の選択バイアスを防ぐために対照から除いた。しかしこれらの癌がどの程度シリカ曝露と関係しているかについその評価には使用する予定である。曝露の指標は、喫煙歴、年齢、粉じん暴露歴、じん肺所見、その他肺癌のリスクファクターの職業歴とした。影響の指標はオッズ比とし、交絡要因についてはマンテルヘンツェル法もしくは多変量解析法で調整した。病理所見とシリカ曝露、じん肺の胸部X線写真の所見とシリカ曝露についてもデータを収集しているので、分析の対象として分析を試みた。 必要に応じて東備地区の産業資料、東備保健所もしくは岡山県庁の資料等も閲覧しデータを充実させた。
|