本研究では、様々な条件での立位・座位作業時の下肢負担を総合的に評価するシステムの開発を試みた。成果は以下の通りである。 1)休憩効果:3時間の立位作業中に座位・長座位(足を伸ばした座位)・臥位のいずれかの姿勢で15分間の休憩をとった場合の下肢腫脹と自覚症状を調べた。その結果、自覚的にはいずれの休憩姿勢も自覚症状の改善がみられたが、下肢腫脹軽減は長座位と臥位でのみ明らかで、横になって休憩することの有効性が確認された。 2)測定姿勢が下肢腫脹測定に与える影響とその原因:インピーダンス法の場合、立位と座位とでは座位のほうが低値になる。その原因に膝関節と足関節の屈曲が関与しており、それは筋収縮による足の形状変化が関与することをモデル解析で明らかにした。また、経時的に測定した場合、両姿勢での測定が一様に混在していればその期待値の比で補正が可能であるが、そうでない場合は作業前あるいは作業後に両姿勢での基準値を補正用に測定しておかざるを得ないことを確認した。 3)フィールド調査:一日の現場作業での下腿腫脹と自覚症状の変化を体動量(歩数)との関係で調査した。下腿腫脹の訴えの自覚症状については、1)の休憩効果の結果と同様、部位別に細かく聞いても反応は明確でなく、詳細な質問項目による調査は必ずしも有用でないことがわかった。下肢腫脹に関しては、体動量が増えると腫脹が軽減し、そうでないと増大する傾向が認められた。 4)携帯装置の開発:下肢腫脹と体動量を同時にモニターできる装置を試作した。下肢腫脹はインピーダンス法、体動量は下肢に限定した動きとして足の屈曲に伴う角速度を記録するようにした。
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