研究課題/領域番号 |
08670396
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
平田 美由紀 九州大学, 医学部, 助手 (30156674)
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研究分担者 |
大村 実 九州大学, 医学部, 助手 (50243936)
田中 昭代 九州大学, 医学部, 講師 (10136484)
槇田 裕之 九州大学, 医学部, 助教授 (30209407)
井上 尚英 九州大学, 医学部, 教授 (00131904)
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キーワード | 慢性ヒ素中毒症 / ヒ素代謝 / 生体影響 |
研究概要 |
無機ヒ素による地下水汚染が世界各地、特にアジア地域で多発しており、飲料水を介した曝露によって、慢性ヒ素中毒患者が急増している。台湾での慢性ヒ素中毒等においては、約0.3ppm以上の無機ヒ素の経口長期曝露によって、皮膚がんや膀胱がん等の内臓がんが認められ、無機ヒ素の発がん性に関するIARCの評価では、グループ1に分類されている。動物では、同程度あるいはそれ以上の濃度の無機ヒ素を長期に経口投与しても、良性腫瘍の発生頻度の増加が認められるのみで、決定的な発がん性の証拠は得られていない。ヒトと動物間のヒ素の発がん性に関する種差については、無機ヒ素のメチル化の程度がヒトでは低いため、特にヒ素中毒症患者では低いために毒性が強くでるのではないかと推定されている(無機ヒ素のメチル化閾値説)。ヒ素のメチル化については、尿中のヒ素の化学形態別分析の結果からメチル化率を評価する傾向にあるが、ヒ素代謝の尿中パターンが他の実験動物と大きく異なるラットでもヒ素のメチル化部位である肝臓でのメチル化代謝は同様であり、肝臓でのヒ素代謝を検索することが重要であると考えられる。肝臓等の生体試料中のヒ素の化学形態別分析は従来、ヒ素とメチル基の炭素間の結合は切れないような条件のアルカリ分解を行い、還元気化-沸点分離法によって検出が行われてきた。最近では、HPLCでヒ素を分別する方法が水などの環境試料のヒ素分析で多用されているが、哺乳動物の臓器試料の分析法としては普及していない。我々は本研究で、アルカリ処理後の肝臓試料をHPLCとICP-MSを組み合わせて分析を行い、肝臓中のヒ素は生体高分子と結合した形で存在していることが示唆された。無機ヒ素の生体内メチル化は解毒機構と理解されているが、今後、ヒ素と生体高分子結合の観点から捉え直す必要があると考えられる。
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