研究概要 |
本研究は、職業性感作物質による呼吸器感作マウスを作成し、その肺免疫機能の変動を、免疫担当細胞由来のサイトカイン産生、マスト細胞、好酸球等の面から解析し、呼吸器感作能を適切に評価するパラメーターを選択し、より迅速な評価法を開発しようとするものである。最終年度は、皮膚塗布による感作マウスの作成と、吸入曝露による感作マウスの作成を行い、曝露経路の違いによる一連の肺免疫機能の変動を解析した。まず、皮膚塗布による感作マウスに対し2週間後に、2%TDI酢酸エチル溶液の10ulを鼻腔に3回注入することにより誘発処置を行い、1,6,12および24時間後に肺を摘出し、総RNAを抽出し、RT-PCR法によりIL-2,IL-4,IL-5,IFN-γのそれぞれのサイトカインmRNAの発現をみた。その結果、IL-2およびIL-5はいずれのタイムコースでもそれらのmRNAの発現は本実験条件下では検出されなかった。一方、IL-4のmRNAの発現は、誘発後1時間で、検出され、6時間で若干弱くなるも、12時間後には再び明確な発現がみられた。また、IFN-γにおいては、1,6時間後には、弱い発現であったが、12時間後にIL-4と同等の発現が検出された。対照としての酢酸エチル注入をしたマウスでは、いずれのサイトカインのmRNAの発現も検出されなかった。一方、皮膚感作能を有する塩化ピクリルにより同様に感作・誘発処置を行ったマウスでは、いずれのサイトカインも本実験条件下では検出されなかった。吸入感作によるマウスの肺におけるサイトカインのmRNA発現は、皮膚塗布における感作マウスと同様な傾向がみられた。したがって、呼吸器感作能の評価においては、皮膚塗布法による全肺組織を用いたサイトカインの産生パターンをパラメーターとしての用いることが有用であることが示唆された。
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