THFは広く産業界で使用されている有機溶剤であるが、その生体内動態についての報告は乏しく、今回は生体の取り込まれたTHFの減衰を明らかにした。 1.方法:あらかじめ実験に協力の賛同を得たヒト(成人男子4名)にTHF200ppmの3時間曝露を行い、曝露終了直後から、時間を追って呼気、血液、尿を採取して各試料中のTHFを測定した。呼気は約20秒の息止め、3分の1残気をテフロン製バッグに採取直後、ガスクロマトグラフ(GC)(FID)へ直接注入した。血液は正中静脈から、尿は曝露前にあらかじめ排尿させた後、いずれも時間を追って採取し、HS-GC(ヘッドスペース付きGC)(FID)にて測定した。 2.結果および考察:1)呼気、および血液のTHFは曝露終了後が最も高く、漸次指数関数的に減少し、4時間後にはわずかに検出、8時間後には検出限界以下となった。しかし、尿中THFの場合は、曝露前に排尿したにもかかわらず、3時間曝露終了直後の値に比べて、曝露終了2時間後の値が高かった。その後4時間後にはわずかに検出、8時間後には検出限界以下となった。その理由として、生体内負荷量は曝露初期は少なく、その後、徐々に増加するため初期に産生された尿はTHF濃度が低いためと考える。このことはかつて今回と似た結果を報告しており、THF曝露の指標に尿中THF濃度を使用する場合には、作業時間および曝露濃度によって採取時間を考慮に入れて採尿する必要がある。 2) THF曝露後の呼気中、血液中および尿中THFの時間的変化を指数関数Y=A^*exp (-at)に当てはめると、呼気からの減衰の半減期は34.1±4.4分(60分まで)、血液からの半減期は54.2±8.7分、尿からは74.7±7.3分と計算され、生体内のTHFは比較的早い時期に代謝されるか、または未変化体のまま生体から消失すると考える。
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