体重が250-300gのラットを用いて、小型動物用高圧タンク内で、ヘリウムを80%含むヘリウム酸素混合ガスを中心に数種類の特殊混合ガスを用いた、5-8絶対気圧の極端に短時間の曝露(10-30分)を行った。そして、生体顕微鏡的手法によって血管内外における減圧性気泡形成状況と減圧症罹患状況を調べた。その結果、たとえ曝露時間が短くても減圧方法に問題があれば、血管内外の気泡形成のみならず、減圧症に罹患することが明らかとなった。また、ヘリウムの混合比が高いほどそのリスクが大きくなる傾向も知られた。これがヒトにも適応するか否かを調べるために、一般的に普及している減圧方法を無視した潜水を行った数例のダイビングプロファイルを詳細に解析し、短時間高気圧曝露における減圧症リスクを検討した。その結果、ヒトにおいても如何に短時間の高圧曝露であっても適正な減圧方法に従わなければ、減圧性気泡の形成は免れず、減圧症に罹患しうることが明らかとなった。もし、ヒトにおてもヘリウム混合比が減圧症罹患リスク影響を及ぼすならば、混合ガスの実用には更なる検討を要すると考えられる。
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