本研究では、ヘリウム酸素混合ガス(He80%-O_220%)圧曝露によって症状の観察からも明確に減圧症と判断できるようなラットモデルを作製した。そして酸素再圧後の顕微鏡的な気泡観察と症候観察から、実験的に形成した体内気泡の消長を視覚的に明らかにするとともに、減圧症罹患後の酸素投与の有効性を明らかにした。次に、きわめて減圧症罹患リスクが高いとされている水中ハンティング(実潜水)の潜水プロファイルを解析し、その後の気泡出現状況と潜水後の酸素呼吸の有効性を調べた。そして動物実験で得られた結果と同様に、減圧性気泡の消失や減圧症罹患リスクの軽減に、圧暴露後の純酸素投与(呼吸)が有効であることを明らかにした。また、研究代表者らは一連の研究として、圧暴露あるいは気泡形成による循環動態の変化についても今後さらに検討する予定である。今回はその基礎的データを得るために、ラットに塩化第二水銀を腹腔内投与し、腎臓の組織障害を与えたり、または血行動態を変化させた際のEndothelin-(ET-1)の発現を免疫組織学的に調べたところ、正常のものに比して明らかに強い発現が確認された。減圧後に種々の臓器レベルでET-1の発現を調べることは、未だ明らかにされていない減圧性気泡の生体影響を解明するうえで有用な手段となりうると考えられる。
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