研究1:ラットをヘリウム酸素混合ガスにより7絶対気圧(ATA)圧暴露し、大気圧まで急速減圧することにより麻痺型減圧症に罹患させた。これらを、3ATAまで酸素再圧したところ、血管内外の減圧性気泡は消失した。しかしながら、麻痺症状は十分に回復しなかった。この結果は、酸素再圧は気泡消失に有効であるが、ヘリウム混合ガス圧暴露による減圧症の症状を抑えるには不十分であることを示唆する。研究2:短時間潜水で減圧症に罹患したダイバーの潜水プロファイルを詳細に調べると共に、気泡の測定を行った。ダイビング・メモリー・レコーダーによる解析によって、いずれも比較的短時間の潜水であったことが確認された。また、超音波ドプラー法によって、これらのダイバーにはスペンサーの分類におけるグレード3以上の血管内気泡が検出された。潜水後、大気圧下において酸素投与を行うことで、3人において気泡は消失した。この結果は、減圧症の治療及び予防に大気圧下酸素投与は不完全であることを示す。 以上の研究により、たとえ短時間の高圧作業であっても減圧症に罹患したさいの酸素投与は、予防・治療において完全なものではないことが明らかとなった。また、ヘリウム混合ガスは、しばしば重症型減圧症を起こすことが知られているが、酸素再圧を行っても予防・治療には不完全であり、ヘリウム混合ガスの使用には慎重であることが必要と思われる。
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