研究概要 |
有機錫化合物とレクチン類のDNAに及ぼす影響を培養細胞の系で検討し,8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)及び癌遺伝子による解析を行うことを目的に実験計画を立てた。 培養細胞としては白血病細胞(HL-60細胞,M1細胞,u-937細胞,Molt-3細胞,Molt-4細胞,Friend細胞など)を用いたところ,有機錫化合物,特にジブチル錫はT細胞株(Molt-3,Molt-4)に強いダメ-ジを与えことが分かり、in vivoの報告とも一致した。ジブチル錫のT細胞,特に未熟なT細胞への傷害のメカニズム解明に,分化度の異なるT細胞株の使用が有用であると思われる。 Friend細胞より全DNAを抽出し,Non RI法であるDIG法での検出を試みたところ,RI法並の感度で検出出来た。今後はジブチル錫添加時のDNA損傷を癌遺伝子をプローブとして解析する予定である。 一方、in vivo実験系においてDNAの損傷があると,尿中に8-OHdGが検出され,DNA損傷の指標となりうることが報告されている。そこで今年度は尿中8-OHdGの検出を陰イオン・陽イオン交換樹脂前処理後に高速液体クロマトグラフィーにより行なった。尿に標品の8-OHdGを添加し,高速液体クロマトグラフィーの検出条件を検討したところ,測定を行なえるようになった。しかし前処理からの全行程を行うと回収率が20〜30%と低く,実際に正確に測定するにはまだ改善の余地が残された。
|