研究概要 |
平成8〜10年度の研究計画実施中に内分泌撹乱化学物質問題が大きなトピックスとして浮上してきた。そこで本年度は当初の研究計画の他にその視点からも研究に取り組んだ。 1) 有機錫化合物の細胞増殖への影響:現在、本物質も内分泌撹乱化学物質の一種とされている。そこで平成8,9年度の細胞株の他にエストロジェンレセプターを持ち、エストジェンの存在により増殖するMCF-7乳がん細胞株の増殖に及ぼす影響についても観察を行った。トリブチル錫は10^<-10>Mの低濃度であってもMCF-7乳がん細胞を増殖する作用を持ち、その程度はトリフェニル錫よりも強かった。 2) 糖鎖による解析の準備:ウサギ血清中より分離精製したレクチンは我々のみが入手している新種のレクチンであり、その性質について解析を行った。そのレクチンのアミノ酸分析では、N末端が可変領域と一致し、またこのレクチンとモルモットの補体の両方が存在すると、ウサギの血球を溶血した。これらのことによりこのレクチンはIgMの性質を有していると考えられる。植物由来のリン脂質結合レクチンやマンノース結合レクチンは補体の存在により溶血作用があり、抗菌、抗ウイルス作用があると報告されている。リン脂質結合レクチンは生来から生体に備わっており、その機能として生体防御系に関与していると考えられている。これらのレクチンは動物に存在しており、我々の入手しているレクチンも同様の機能を有していると思われるが現段階の精製純度ではIgGが混入していることも考えられ、更なる精製と機能の解析が必要である。
|