研究概要 |
有機錫化合物とレクチン類のDNAに及ぼす影響を培養細胞の系で検討を行なった。 1) 細胞の培養:白血病細胞株8種類、乳がん細胞株1種類の培養が可能となった。 2) 有機錫化合物及びレクチン類の細胞増殖への影響:有機錫化合物は骨髄系細胞に比べリンパ系細胞株に毒性が強く表れ、中でも細胞株(Molt-3,Molt-4)に強い毒性が見られた。分化の進行度の面からは未分化の細胞に毒性がより強く表れた。トリブチル錫は10^<-10>Mの低濃度でMCF-7乳がん細胞株を増殖させ、内分泌撹乱化学物質作用を有することが観察された。 3) 分化誘導への影響:DMSOによるFriend細胞の分化誘導はジブチル錫とDMSOを事前に混合して培養細胞に添加すると、事前の混合時間が長い程、分化誘導に強い抵抗性(80%)がみられた。この現象の生物学的意義についての解析は意義があると思われる。 4) 糖鎖への影響:ウサギ血清中より入手したレクチンはモルモット補体の存在下でウサギ血球を溶血した。この性質はマンノース結合レクチンや、リン脂質結合レクチンの性質とも類似しており、またアミノ酸分析からはIgMとも考えられ、抗菌、抗ウイルス性などの生来から備わっている生体防御系に関与している可能性があるが、更なる精製及び機能の解析が必要である。 5) DNA及び8-OHdGの分析:全DNAを細胞から抽出し、NonRI法であるDIG法での検出を試みたところ、RI法並の感度で検出が可能であった。またDNA損傷物質の尿中8-OHdGを陽イオン、陰イオン交換樹脂で前処理し、HPLCによる高感度分析の検討を行ったが、前処理方法の回収率に改善の余地がみられた。
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