研究概要 |
旅客機の機内作業者のジェットラグによるサーカデイアンリズムの頂点は東行便(北米行き)群では国内作業者の頂点(午後2時〜3時)より朝方へ移動し,西行便(欧州行き)群では夕方へ移動することが前年の研究で明らかになり、この状態は帰国後4日から7日かかって国内のリズムに戻ってゆく。 本年度は機内作業者下肢と腰部の、体表温度、表面筋電図と機内の床の振動を測定観測して解析を行った。身体活動計による観測した活動量の増加とともに体表温度が上昇し、筋電図の積分値が増加した。但し、体表温度は仮眠休憩時の入眠時においても若干上昇する。上昇の見られない例は入眠が困難であった。機内湿度が8〜15%と低いためか、下腿の体表温度は活動しているにもかかわらず低い状態が続いていた。 東行便は昼出発する便が多いため、夜出発する西行便に比べ、旅客は機乗中の中央時間帯を仮眠で過ごし、離陸後、着陸前に覚醒時を過ごし、東行便の作業者では活動量が西行便群よりも多くなる。一般には機内活動の少ない旅客では東行便では現地のリズムに合いやすくて辛さが少なく、西行便では現地のリズムに合いにくいために辛いといわれるが、機内作業者ではリズムへの適合以外の作業時間帯の問題が存在する。 床振動はB747について行ったが、30〜125Hzに主成分を持つ振動がみられ、特に30〜40Hzにみられる振動はタービンの回転によって発生する振動と考えられた。離陸上昇時は10〜15dB水平航行時よりも床振動が大きいが、水平航行時は安定していた。当初考えていた、0.8〜10Hzの低周波振動はあまりみられず、却って比較のため測定した旅客鉄道の方が大きかった。国内便のB777はB747よりも床振動が5dB程度大きい。筋活動は床振動の大きさと関連が見られた。上空の気圧変動による機体の揺れが発生したときは筋電図上大きな筋活動として現れていた。
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