長崎県島原にある雲仙普賢岳の大火砕流災害による水無川への土石流の堆積を「危険地域」から除去するため、大型ダンプカ-、パワーシャベルおよび可動モニターカメラを用いた土工作業が無線遠隔操作で行われた。作業者3名がこのVDTによる無線遠隔作業に10カ月間(1日約6.5時間)従事していた(各々作業者1、2、3)。本研究では、VDT作業によって生じる眼精疲労の蓄積性を明らかにするために、視覚誘発電位、近点距離およびフリッカーが、月曜日から金曜日の朝(作業開始前)、正午(昼食前)と晩(作業終了後)の連続5日間、計15回測定された。作業者2は30分間毎に10分の休憩(VDT作業のない時間)をとることができた。また、対照群として同じ職場の性・年齢のマッチした非VDT作業者3名がこの研究に参加した。 作業者1および3で視覚誘発電位潜時、近点距離およびフリッカー値の有意な日内変動が観察された。この変動は月曜日から金曜日になるにつれて悪化する傾向が見られた。一方、対称群では有意な日内および日間変動は見られなかった。VDT作業者の近点距離は対照群より有意に延長していた。同様に、作業者1および3のフリッカー値は対応する対照群に比べ有意に低下していた。VDT作業者における午前作業の前後の視覚誘発電位と午後作業の前後の近点距離およびフリッカー値の変化は対照群より有意に大きかった。 以上より、VDT作業は視覚神経系機能に影響することが示された。また、長期のVDT作業による眼精疲労は日毎に蓄積される可能性が示唆された。
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