近年、人口の急激な高齢化に伴い、骨粗鬆症は公衆衛生上も医療経済上も究めて重要な対策目標となってきた。申請者らは本症のリスクを遺伝的側面と生活習慣的側面の療法から的確に把握し、それに見合った指導法を開発して骨粗鬆症とそれによる骨折を予防し、もって高齢者の生活能力の保持と地域社会の活力の維持に貢献することを目的として本研究を企画し、平成8年度から実施してきた。9年度には採取した血液からDNA-を抽出し、いくつかの骨代謝関連遺伝子多型を同定し、データベースを完成させた。それを解析して以下の結果を得た。 1.Vitamin D receptor遺伝子多型はBaselineの骨密度には大きな影響を及ぼしていた。 2.Estrogen receptor遺伝子多型はBaselineの骨密度に弱いが、有意な影響を示した。 3.Osteocalcinの遺伝子のPromorter領域に新たな多型を発見した。その多型は骨減少症の発生に有意な影響を持っていた。 4.これらの遺伝子多型は閉経後の骨量減少には大きな寄与はせず、食事からの十分なCa接種と強い体幹筋力がこの減少を防ぎ、喫煙が助長する方向で有意に寄与していた。 骨量には遺伝的負荷が大きいとされているが、遺伝要因は最大骨量の獲得期に大きく寄与し、閉経後はむしろLifestyle要因が大きく関与することが示唆された。したがって、これまで明らかになった遺伝要因を考慮した対策は若年期に必要であると考えられた。
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