研究課題/領域番号 |
08670423
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宮尾 克 名古屋大学, 大学院・多元数理科学研究科, 教授 (70157593)
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研究分担者 |
長谷川 勝夫 名古屋大学, 大学院・多元数理科学研究科, 教授 (70004463)
四方 義啓 名古屋大学, 大学院・多元数理科学研究科, 教授 (50028114)
近藤 高明 名古屋大学, 医学部, 講師 (00195900)
榊原 久孝 名古屋大学, 医学部, 助教授 (80153873)
豊嶋 英明 名古屋大学, 医学部, 教授 (10023657)
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キーワード | アルツハイマー病 / ダウン症候群 / 瞳孔 / トロピカミド / アセチルコリン / 対光反射 |
研究概要 |
中年ダウン症とアルツハイマー型痴呆患者の抗コリン剤点眼に対する過剰散瞳現象と対光反射を検討した。対象は、アルツハイマー型痴呆初老期発症者(AD)21名、同老年期発症者(SD)32名、健常者15名、中年ダウン症(DS)6名、脳血管性痴呆(VD)9名である。暗順応させた後、対光反射を検査し、Midrin-P中のtropicamideが0.01%の希釈液を片眼に点眼し、5〜10分おきに30分まで瞳孔径を計測し、最後に対光反射を検査した。対側眼には生食を点眼した。瞳孔径最大時のデータを各群で比較した。Midrin-Pに対する最大散瞳量は、健常者で0.51±0.78mmに対して、ADで1.00±0.57mm(有意差なし)、中年DSで1.49±0.54mm(危険率5%未満で健常者と有意差あり)であり、SDとVDの最大散瞳量は健常者とは差がなかった。一方、69歳以下に限ると、散瞳量は健常者7名(平均年齢57.8歳)の0.20±0.75mmに対して、AD18名(平均年齢67.5歳)の1.12±0.52mm,中年DS(平均年齢35.8歳)の1.49±0.54mmでいずれも健常者より過敏に散大していた。つぎに、上記のMidrin-P点眼被験者に対して、瞳孔が、光刺激前の瞳孔径から1秒間の光刺激による最小瞳孔径の50%にまで縮瞳した時点を起点とし、最小瞳孔径を経て、散瞳し、縮瞳時の瞳孔径変化の63%分の散瞳に達した時点までの時間、すなわち縮瞳時間指標(CTI)を検討した。対象はAD&SD18名(平均年齢69.1歳)と、健常者14名(平均年齢66.9歳)であった。AD&SD群のCTIでは、点眼前と比較してMidrin-P点眼40分後の短縮に有意差(危険率1%未満)を認めたが、健常対照群では、点眼の前後でCTIに有意な変化は認められなかった。これらの検討の結果、アルツハイマー型痴呆患者に対する抗コリン剤点眼後の瞳孔反応の測定は、若年発症の場合に有効であり、早期診断に寄与しうる可能性が示唆された。
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