研究概要 |
【目的】知力障害はアクティブ・ライフ喪失の大きな要因である。本研究では地域高齢者の知力障害と関連する要因と生命予後に及ぼす影響を検討した。【対象と方法】大阪府S市に在住する65歳以上の高齢者から無作為抽出して得られた1,473人を調査対象として、平成4年10月に英国人口統計情報局により開発された方法を用いて知力障害の状態について調査し、1,383人(93.9%)から有効回答が得られた。1,383人を観察コ-ホ-トとして、平成8年3月末までの42か月間の生命予後を追跡した。【結果と考察】知力障害の出現頻度は男女とも年齢が高くなるにともない増加を示すが、「重度」の知力障害は85歳以上の者で顕著であった。単変量解析からは、75歳以上の年齢、低日常生活動作能力(ADL)、脳卒中治療「あり」、社会活動「なし」、生きがい「なし」は、「軽度」、「中等度」、「重度」のいずれの知力障害とも有意な関連を示した。ロジスティックモデルを用いた多変量解析から、75歳以上の年齢と低ADLはいずれの知力障害とも独立した関連要因であった。カプラン・マイヤー法を用いて知力障害の程度別に累積生存率をみると、知力障害「なし」の者の生存率は、65〜74歳、75歳以上の両年齢階級においても最も高く、知力障害が重度になるにともない低下を示した。コックスの比例バザードモデルを用いた多変量解析から、「重度」の知力障害は性、年齢、健康状態、社会・精神状態を調整しても2.21(95%信頼区間:1.31〜3.75)と有意なバザード比を示した。以上の成績は、知力障害は健康状態、社会的・精神的状況に大きく影響を受け、生命予後に対しては独立の危険因子となる可能性を示している。知力障害の予防や改善に資する調査研究とともに、知力障害を有する高齢者の支援体制の充実の必要性を示すものである。
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