研究概要 |
【目的】地域高齢者の健康の保持・増進に寄与する要因を明かにし、予防的方策のあり方について検討する。 【対象と方法】大阪府S市において平成4年10月に無作為抽出により得られた65歳以上の高齢者1,405人を観察コホートとして、平成8年3月末日までの42か月間の転帰を観察した。観察期間中に87人が市外への転出により追跡が不能となり、追跡が可能であった1,318人(93.8%)の内、189人(14.3%)が死亡していた。 【結果と考察】カプラン・マイヤー法を用いた生存分析から、健康診断を受診していた者、健康づくりを実施していた者の生存率はいずれも有意に高く、とくに早期に健康診断を受診していた者、健康づくりを実施していた者の生存率は最も高率を示した。また、健康診断については、基本健康診査やがん検診を組み合わせて利用している者の生存率は有意に高率を示した。さらに、社会活動に参加している者、生きがいを保有する者の生存率は、参加していない者、保有していない者に比べて有意に高率であった。コックス比例ハザードモデルを用いて生存に及ぼす要因を検討すると、性、年齢、支障などの要因の影響を除いても、健康診断の受診と健康づくりの実施はいずれも死亡と有意な負の関連をみとめ、社会活動と生きがいも負の関連を示した。死因別に検討すると、健康診断の受診、および健康づくりの実施は脳卒中、心疾患、がんのいずれの死亡とも負の関連を示し、社会活動、および生きがいは脳卒中、心疾患と負の関連をみとめた。健康診査の受診や健康づくりの実践は社会活動への積極的な参加、生きがい感の保有とともに高齢者の死亡を抑制する可能性を示しており、地域で実践されている保健予防活動が高齢者のアクティブ・ライフの保持・増進に寄与するものと考えられる
|