研究概要 |
平成8年7月から同年8月と平成9年8月に、我が国のハンセン病療養所4カ所の入所者全員を対象にして、精神的側面の健康状態の実態とそれに関連する要因を明かにするために、自記式のアンケート調査を行った。四つの療養所の回答率は、それぞれ70.9%から84.8%あり、回答は1,016名(76.6%)から得られた。精神的側面の健康状態は、the Delighted Terrible Scaleで生活満足度を、General Health Questionnaire12項目版で精神的健康状態を測定し、それぞれと関連する要因を検討した。生活満足度『非満足』および精神的健康状態『悪い』割合は、男では4つの療養所間の差はほととんどみられなかったが、女の場合は『非満足』および『悪い』は、それぞれ一つの療養所が他の3療養所と比べて高率であった。 関連要因を検討した結果、生活満足度との関連は、「50年以上」療養期間が男の1療養所と女の2療養所で、「昭和21年以前」が女の2療養所でみられ、長い療養期間と、早期の入所が『非満足』を低くしていた。『悪い』精神的健康状態との有意な関連は、男の場合、療養場所「不自由舎」、入所時期「21年以前」、療養期間「50年以上」が1療養所で、入所時年齢「20歳以上」が女の2療養所でみられた。身体的健康状態の不良と『非満足』との関連は、年齢の影響を除去した場合、男女とも明らかでなかった。一方、精神的健康状態『悪い』は各身体的項目の不良との関連がみられ、「視力」は男の2療養所で、「IADL」は男の1療養所と女の2療養所で有意であった。社会的ネットワークに関しては、年齢とADLの影響を除去した場合、男では「接触頻度の多寡」および「一日の過ごし方」との関連が生活満足度および精神的健康状態にみられた。一方女では、「一日の過ごし方」と生活満足度との関連、各ネットワークの有無と生活満足度および精神的健康状態との関連がみられ、「配偶者あり」、「クラブ参加あり」が『非満足』と有意に関連していたことは注目された。
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