研究概要 |
家庭や地域社会において国民にきめ細かな保健、医療、福祉のサービスを効率的に提供していくためには、これら保健、医療、福祉の各サービスの連携が必要不可欠であり、市町村保健センターや在宅介護支援センター、訪問看護支援センター等を拠点とした情報ネットワークの整備は、保健、医療、福祉の各分野間における情報の交換や活用を進め、質の高い総合的なサービスの提供を実現するために必須の条件になってきた。情報処理や情報通信の技術の発達により、国民生活に密接な保健医療福祉サービスの一層の充実が期待できるようになり、これらの情報化によって、全体として保健医療福祉サービスの効率化が図られ、国民の費用負担の増大を抑えることが期待できると考えられる。このようなインフラ整備を前提として、保健、医療、福祉の連携が図れるシステムをつくることが現在の社会システムとして重要な課題になっている. メモリーカードを用いた保健,医療,福祉の情報システムについて,地域医療の中で重要な役割を担っている開業医がどのような考えをもっているかを探るために,米子市内の診療所の医師134名を対象に意識調査を行い,91%の回答を得た.カードシステムの導入について医師の関心は高く,医師の主導で行なうべきであるという回答が多くみられた.しかし,カードシステムを積極的に使いたい医師は少数で,状況をみて使うという回答が多かった.医療情報に関しての医療法の改正について知らないという回答が35%あった.機器の購入費用,入力の費用については行政の負担を求める回答が多かったが,保健医療情報をカードに入力することができれば,実際の診療に利用価値は高いという回答が多かった.その反面,福祉関係の項目については関心が低く,医療の側からの福祉との連携をとる状況にはないことがうかがわれた.また,医療情報のシステム化は効率の向上を図る一方で,個人情報の秘密保守の原則を維持しなければならない.個人情報の管理について危惧の念を持つ医師が多かった.さらに,医療情報の個人への照会について,医師が責任をもって患者本人に照会するとする意見が多かった.財政的理由から多くの都市でカードシステムの導入が見送られたが,保健、医療、福祉の連携の必要性は待ったなしの状況にあり,新たな情報ネットワークの取り組みが待たれる.
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