研究概要 |
肝炎の多発地区である岡山県下N地区で検診を行い,平成8年度受診者は118人で,このうちHCVAb陽性者は89人(75.4%)であった。HCVAb陽性者のうち33人にAST>40IU/1 or ALT>40IU/1 or ZTT>12KUの肝機能異常を認め,HCVAb陰性の29人はすべて肝機能正常であった。また,昨年度までHCVAb陰性の者で,HCVAbあるいはHCV-RNAが陽性化した例は認められなかった。 HCVAb陽性例についてHCV-RNAの測定を行い、71例が陽性であり,肝機能異常を認めた33例中31例がHCV-RNA陽性であった。この例はIFN治療の適応であり,肝癌High Risk Groupとして厳重な追跡が必要である。HCV-RNA陽性で肝機能正常の40例は今後肝炎を発症する可能性があり,年3〜4回肝機能検査を受けることが望ましいと考えられる。HCVAb陽性であるHCV-RNA陰性で肝機能も正常の16人はC型肝炎の既往を示すもので年1〜2回の検診で充分と考えられる。 GBV-C RNAの陽性者は8人(6.8%)で,このうち7人がHCVAb陽性,さらにHCV-RNA陽性は6人,肝機能異常を認めた者は4人であり,G型肝炎の関与は少ないと考えられた。尚,HBsAg陽性例は1例認められたが,この例はHCVAb陽性,HCV-RNA陽性でありHCVの影響が大きいと考えられた。 肝機能異常者を中心に年2回腹部超音波検査を行い,受診者はのべ58人であったが,肝癌は発見されなかった。また,AFP20ng/ml以上を認めた2例についてAFPレクチン親和電気泳動を行ったが,正常パターンであった。肝癌死亡を減らすには肝癌の早期発見に努めることも必要であるが,1.5次予防として慢性肝炎例を拾い上げて治療することがさらに重要であり,基本健康診査で肝機能異常を認めた例に対してはVirus marker,AFPを検査して要治療例,要追跡例を選定し,指導していくことが重要と考えられる。
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