研究概要 |
研究結果:肝炎の多発地区である岡山県F町J地区で住民検診を実施し,97年迄に247人の住民がのべ708回受診し,HCVAb陽性率は81.0%と非常に高率であった。HCVAb陽性者のうち164人にHCV-RNAを測定し,陽性者は132例で,このうち81例に肝機能異常を認めた。HBsAgまたはHCVAbが陽性で肝機能異常が高度の例は,肝癌High-Risk Group(HEG)として年2回の腹部超音波検査(US)を行った。この追跡検診をのべ222人が受診し,3例の肝細胞癌が発見され,肝癌発見率はのべ受診者の0.3%,追跡検診受診者の1.4%であった。HCVAb陰性例の追跡では46人が2回以上受診したが,HCVAbが陽性化した例は認めなかった。また,岡山県健康づくり財団が行った検診の受診者24,839人のうち、AST,ZTTに異常を認めた808例にAFPを測定し,AFP20ng/ml以上は33例であった。これに対しAFP glycoformを検査し,7例が肝細胞癌パターンを示し,精検にて5例の肝癌が発見された。この方式での肝癌発見率は全受診者の0.02%,AFP glycoform陽性者の71.4%で,非常に効率よく肝癌HRGを選び出すことが可能であり、USを用いた検診より費用効果も高かった。 結論:HCVAb陽性者のうちHCV-RNA陽性で肝機能異常のある例はIFN治療の適応であり,肝癌HRGとしてUSを含めた厳重な追跡が必要である。HCV-RNA陽性で肝機能正常の例は肝炎を発症する可能があり,年3〜4回肝機能検査を受けることが望ましい。HCVAb陽性であるがHCV-RNA陰性で肝機能正常の例は,HCV感染の既往を示すもので年1〜2回の検診で充分と考えられる。肝癌の早期発見には肝機能とVirus marker,AFPの検査により肝癌HRGを選定し,USを含めた追跡を行うのが効率が良いが,1.5次予防として慢性肝炎例を拾い上げて治療し,肝癌の発見自体を予防することがさらに重要である。
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