研究概要 |
【目的】肝疾患検診を受けた住民を前向きに追跡調査して、抗C型肝炎ウイルス抗体(以下HCV抗体と略す)などの検査値や生活習慣と死亡や肝癌罹患との関連を検討した。【方法】肝疾患検診を受診した30歳以上の佐賀県K町住民3,575人(男1,150、女2,425)に対して1992年6月に基礎調査を実施した。基礎調査時の情報はHCV抗体(第2世代PHA法、抗体価が2^5〜2^<11>を弱陽性、2^<12>以上を強陽性とした)、血清生化学的検査、喫煙、飲酒等の生活習慣などであった。調査対象者からインフォームド・コンセントを得た後に、1997年3月31目までの死亡や肝癌罹患を終点として医療機関やK町役場などで追跡調査を行った。コックス回帰分析によってハザード比とその95%信頼区間を求めて死亡や肝癌罹患と関連する要因を検討した。【結果】対象者の基礎調査時の平均年齢(標準偏差)は男が61.7歳(12.8)で、女の56.5歳(13.5)よりも高かった。調査の終点までの約4年9か月間に124人(男73、女51)が死亡し、22人(男12、女10)が新たに肝癌に罹患した。1.死亡のリスク要因 年齢が高いことや男性であることが死亡のリスクを高めていた。そこで、男女別に年齢を調整して検討したが、男ではHCV抗体強陽性、肝癌やその他の癌への罹患、GOTなどの異常高値などが死亡のリスクを高めていた。女では癌罹患、肝硬変罹患、肝疾患の家族歴、GOTなどの異常高値などが死亡のリスクを高めていた。2.肝癌罹患のリスク要因 男ではHCV抗体強陽性、HCVとHBVの重複感染、肝疾患の家族歴、GOTなどの異常高値などが肝癌罹患のリスクを高めていた。女ではHCV抗体強陽性、肝癌以外の癌への罹患、GOTなどの異常高値などが肝癌罹患のリスクを高めていた。飲酒や喫煙習慣と肝癌罹患との明確な関連はみられなかった。【考察】HCV抗体陽性者の中でもその抗体価によって予後が異なることが明らかになった。
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