本研究ではEBウイルス陽性胃がん患者とEBウイルス陰性胃がん患者を対象として生活習慣に関する質問調査を行い、EBウイルス関連胃がんとそれ以外の胃がんとで喫煙などの他の環境因子が、どのように影響しているのかを比較検討した。対象は1996年から1997年の間に新たに診断された胃がん患者で、EBERを標的としたin situ hybridizationによって同定されたEBウイルス陽性例27名とEBウイルス陰性例60名である。それぞれの対象者に、共通の質問票を用いた面接法による聞き取り調査を行い解析を行った。その結果、喫煙経験ありと答えたものの割合はEBウイルス陽性例で81%、EBウイルス陰性例で60%であった。胃がんの主要部位別にその割合を検討したところ、EBウイルス陰性例では幽門部、胃体部、噴門部の順に喫煙者の割合が高くなっている傾向があるのに対し、EBウイルス陽性例ではいずれの部位でも80%前後の高い喫煙割合を示したが統計学的有意差は認めなかった。また、EBウイルス陽性例の平均出生順位は陰性例のそれよりも低く、性・がんの部位による影響を除いた上で比較してもその差は有意であった。同様の傾向は、EBウイルスとの関連が示唆されているHodgkin病でも報告されていることから、ウイルスの感染時期がEBウイルス関連胃がんのリスクと関連している可能性があると考えられる。
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