本研究ではEBウイルス陽性胃がん患者とEBウイルス陰性胃がん患者を対象として生活習慣に関する質問調査を行い、EBウイルス関連胃がんとそれ以外の胃がんとで喫煙などの他の環境因子が、どのように影響しているのかを比較検討した。対象は1996年から1997年の間に新たに診断された胃がん患者で、EBERを標的としたin situ hybridizationによって同定されたEBウイルス陽性例28名とEBウイルス陰性例60名である。EBウイルス陽性例1例に対し、男性は2例の女性は3例の陰性胃がん患者を性と年齢(+/-5歳)でマッチさせた。それぞれの対象者に、共通の質問票を用いた面接法による聞き取り調査を行い解析を行った。 その結果、出生順位または喫煙年数とEBERの有無との間に有意な相関を認めた。出生順位が遅いほどEBウイルス陽性の胃がんのオッズ比が低かった。兄弟が1〜4人の群と比べて兄弟の数が5以上の群でオッズ比が低くなっており、兄弟数が多いほどEBウイルス陽性胃がんのリスクが低くなっている可能性を示唆している。 喫煙歴が20年未満の群と比べて、喫煙歴40年以上の群のオッズ比は6.1と有意に高い値を示した。一方、禁煙者や喫煙者のオッズ比は高い傾向を示したものの統計学的有意差を認めず、喫煙本数についても有意な傾向は認められなかった。 今回の結果は、ウイルスの感染時期がEBウイルス関連胃がんのリスクと関連している可能性があると考えられる。
|