研究課題/領域番号 |
08670447
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
北村 勝彦 横浜市立大学, 医学部, 助教授 (30195284)
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研究分担者 |
本多 三男 国立感染症研究所(研究職), 厚生技官
伊藤 章 横浜市立大学, 医学部, 助教授 (50046059)
曽田 研二 横浜市立大学, 医学部, 教授 (80154706)
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キーワード | HIV感染症 / ペプタイドエライザ / HIVサブタイピング / 臨床マーカー |
研究概要 |
拠点病院の感染症外来に受診している感染者・患者血清を用い、HIVの代表的なクレイドのV3領域の合成ペプチドを固相化したEIA法を用いHIVのタイピングを行った。その結果、約27%にタイの異性間感染に多く見られるクレイドE型の抗体が検出された。内訳を見ると、異性間感染の33%にタイ型の抗体が検出された。また、血友病など、非加熱処理血液製剤の輸注による感染では全例が欧米型であるクレイドB型の抗体が検出された。これらのことから日本国内の新規感染は性的接触による感染が増加していること、特に東南アジア地域からのウイルス株の輸入、それに続く2次感染が急増していること、等が推測され早急な対策を講ずる必要があることが示された。合成ペプチドによるEIA法は米国CDCの開発した方法を用いた。シークエンスの解析に比べ大量の検体を短時間に処理しうる点でEIA法は優れている。しかし、血清抗体によるウイルスのクレイド分類を正確に判定することは、今回の研究期間では特異性の点で不安定な要素が多く、更に症例数を増やした上でのシークエンスとの比較検討が必要であると考えられた。また、10年間以上CD4値が500cells/mm3以上且つ未発症である感染者を長期未発症者(NP)と定義した日本人検体もあわせて用い免疫学的かつ、ウイルス学的な解析を行った。まず、血漿中HIV-1のV3領域の遺伝子解析を行い、主に血中HIV-RNA(p-RNA)量との結果と比較検討した。NP群ではp-RNA量は検出限界以下であり、宿主細胞に対する感染性も弱く、遺伝子学的な変異が少なかった。一方、非NP群はp-RNA量が10,000Eq/ml以上になると病期進行度を増す傾向があり、感染性が強く、クワシスピーシスを形成しやすいことがわかった。この結果から、血漿中HIV定量によるウイルス分離状況と臨床株の感染性および増幅力が推測され予後判定因子のひとつとして有用であると思われた。以上の結果を総合すると、ウイルスの性状を多角的に得ることにより流行状況の把握、個々の感染者の臨床病態や治療効果判定に有用な判断材料を提供しうるものと考えられた。
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