本研究は、ネブライザーの微生物汚染の実態調査およびその防止対策の確立を目的として行ったものである。奈良県立医科大学附属病院で使用中のネブライザーの微生物汚染および使用方法の調査を行い、下記の知見が得られた。 1. 調査したネブライザー内の薬液の90%が、10^1〜10^6CFU/mlの微生物汚染を受けていた。 2. 汚染微生物としては、ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌が大部分で、その中でSphingomonas paucimobilis、Burkholderia cepacia、Sphingobacterium multivorum、Flavobacterium meningosepticum、Pseudomonas sp.、Acinetobacter sp.、Methylobacterium sp.が同定できた。その他、グラム陽性桿菌や真菌も少数検出された。 3. ネブライザーを介したLegionella pneumophila、Mycobacterium tuberculosisおよびMRSAの伝播の可能性について検討を試みたが、調査したネブライザー内の薬液槽からはいずれの菌も検出されなかった。 4. ネブライザーの使用方法の聞き取り調査を統計的に解析した結果、消毒薬を用いたネブライザーの洗浄と、薬液の冷蔵保存とを併用することにより、薬液1ml当たりの汚染菌数を1桁のレベルに抑制できることが推察された。そして、この方法で実際にネブライザーを管理することにより、ほぼ予想通りに微生物汚染を低減することができた。 5. 付随研究として、ネブライザーに類似の装置で、入院患者がベッドサイドで使用することの多い加湿器についても実験を行い、加湿器の種類と空中浮遊菌数との関連性を明らかにした。
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