研究概要 |
将来の骨折予防のため、若年時最大骨量の増加が重要であるといわれている。今回職域集団を対象に、若年者の身体活動度と骨密度の関連を評価した。平成8年度に定義した20〜39歳の男性160人について、骨密度(日立メディコ製BMD-1X)値と身体活動度の指標として握力、最大酸素摂取量、肺活量、体脂肪率との関連をレコード・リンケージにより解析した。20歳代では骨密度は1.056±0.112(平均±標準偏差,g/cm^2)、左右握力の平均50.2±8.3(kg)、最大酸素摂取量39.3±5.3(ml/kg/分)、肺活量4382.7±557.9(ml)、体脂肪率19.2±4.3(%)であり、30歳代では順に、1.043±0.135(g/cm^2)、49.3±6.3(kg)、37.2±5.7(ml/kg/分)、4233.8±540.9(ml)、21.7±4.9(%)であった。年齢を調整した項目相互の偏相関をみると、骨密度は身長(相関係数0.29,p<0.001)、体重(0.22,p<0.01)、握力(0.24,p<0.01)、と正の相関を示した。身体能力のよい指標である最大酸素摂取量とは、有意ではないが負の相関(-0.08)であった。またbody mass index,BMIと骨密度の関連は有意でなく、BMIと最大酸素摂取量とは-0.45(p <0.001)と、肥満度の高い者ほど最大酸素摂取量が少ない傾向がみられた。我々は、地域コホート3,048人の8年間の追跡から、心疾患死亡ではBM126以上でハザード比2.09(95%CI0.60-7.29)と死亡危険の上昇を、また1日歩行30分以内の者で総死亡の危険が1.70(1.25-2.31)、脳血管疾患死亡が3.35(1.13-9.94)と身体活動度の高いことが生命予後に有利であることを観察している。従って、骨密度の改善にも、生命予後の改善にも、若年期から身体活動度を高めることが有用であると考えられる。
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