研究概要 |
本年度(初年度)は、インドネシアの出生力の地域差を検討する上で、主要な島を中心に以下の5つの地域に分類した。すなわち、スマトラ(8州)、ジャワ(ジャカルタ特別市とジョクジャカルタ特別州を含む4州)、カリマンタン(4州)、ウラウェシ(4州)、その他(6州、東ティモ-ルに関してはインドネシアの州とするどうかについて問題があるが、本報告では含めた)である。分析には主に、Penduduk Indonesia : Tabel Pendahuluan Hasil Sub-Sampel Sensus Penduduk 1990 (Biro Pusat Statistik Indonesia,1991)のデータを用いた。主な分析は、年齢階級別の出産児数、初婚年齢分布などである。結果の概要は以下のとおりである。女性1人当たりの出産児数は、いずれの地域でも55-59歳の女性が最も多く、インドネシア全体では5.20であった。地域別にみると、この年齢の出産児数はジャワが最も低値で4.95、スマトラが最も高値で6.04であり顕著な差が見られた。しかし、20歳未満の出産児数を見ると、ジャワが他のどの地域より高い値を示してる。一方、既婚女性の初婚年齢の分布はジャワで早婚の傾向を示した。すなわち、初婚年齢が18歳未満の女性の割合は、ジャワが57.7%で最も高く、"その他"が25.3%で最も低く、スマトラは"その他"に次いで低く40.3%であった。インドネシア全体では50.3%であった。これら2つの結果は、地域による結婚年齢と出産パターンの相違を反映していると推測される。こうした知見は、ジャワの女性の早婚(特に18歳未満)が全体として20歳までの出生力を他の地域より高めていること、ジャワではそれ以降の年齢で他の地域に較べて、より強い出生抑制が行われていることを示していると考えられる。次年度以降は、州単位での出生力の算出・分析などを行うと同時に、地域格差をもたらしている要因を検討したい。
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