本年度は、研究の基本となるネットワーク・システムの向上とわが国のAIDS/HIV流行の動向に影響を与えうる世界の流行の動向、とくにアジア・太平洋地域の動向の解析に焦点を当てた。結核は単独の疾患としても同地域で高い有病率を有する。日本国内のAIDS/HIVに関する疫学情報については、血液凝固因子製剤輸注例を含め、1997年12月にエイズサーベイランス委員会がエイズ動向委員会に改組されたことに伴い、エイズ予防法施行前の症例を含め申請者を含む作業部会で、今までの疫学データの見直し、整理が行われた。その結果は確定していないが、Exposure categoryなどにつき現在までの認識を改めることが必要な部分があり。確定を待って、その情報をわかりやす形で提供することが必要であると考えられた。インターネット上に開設したホームページは上記理由で、国内の疫学データについては更新を行わなかったが、既に1万件を超える検索が認められ、この種の情報の要求が予想以上に高いものであることが再認識された。 結核・エイズ発症合併症例のについては、わが国の場合、結核の病像が典型的でないことから、担当医が疑問をもって抗HIV抗体の検査を患者の承諾下で進めて確認される事例が多く、感染が見逃されている初期の結核感染が検査の対象外にあることを考慮すると、co-incideは一般に予想されているよりも高値である可能性が示唆された。現在も多くの問題点が指摘されている結核の診断が適切・迅速に行われることが、実態把握の条件として不可欠であると考えている。
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