本年度は1985年より継続して観察を行っている職域のコホートの一部、239名を対象に、以下の野外調査を実施した。 (1)末梢血の血清サイトカイン値の測定 (2)肺機能測定(スパイロメトリー、最大努力性呼出曲線) (3)呼吸器症状、生活習慣、等の質問票調査 (4)業務歴調査 (1)は、採血後ただちに遠心分離後血清を採取し冷凍保存した。現在、高感度化学発光-ELISA法を用いて、インターロイキン(以下IL)-4、IL-5、IL-6、IL-10、インターフェロン-γ等の測定を逐次実施中である。(2)は、ローリングシール型スパイロメータを用いて高精度の測定を行った。これまでの測定結果と結合して各種肺機能指標の1年あたりの縦断的な加齢変化を算出したところ、一秒量の平均【+-】標準誤差は、-29【+-】1.8(ml)、努力性肺活量では-28【+-】1.9(ml)程度であった。(3)および(4)より、コホートの約55%が、追跡期間中にアスベスト等の鉱物繊維曝露があり、うち25%は、胸部レントゲン上、軽度の線維化所見を有していた。また喫煙者が約60%であった。現在までの予備的解析では、胸部の線維化所見および喫煙は肺機能の加齢低下の加速因子であるが、鉱物繊維曝露の有無は肺機能加齢低下との有意な関連は認めなかった。 今後血清サイトカイン値の測定結果が得られ次第、これらの交絡要因の影響を補正して肺機能加齢低下との関連を検討する予定である。
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