本年度は、1985年より継続して観察を行っている職域のコホートのうち、昨年度に調査を実施しなかった、残りの対象者223名を対象として野外調査を実施した。調査項目は昨年度と同様の以下の項目である。 (1)末梢血の血清サイトカイン値の測定 (2)肺機能測定(スパイロメトリー、最大努力性呼出曲線) (3)呼吸器症状・生活習慣等の質問票調査 (4)業務歴調査 (1)は、採血後ただちに遠心分離後血清を採取し冷凍保存した。昨年度の検討結果から、インターロイキン-4、-6(IL-4、IL-6)、およびインターフェロン-γ(IFN-γ)の3種類に絞って高感度化学発光-ELISA法による測定を行った。(2)はローリングシール型スパイロメータを用い、(3)(4)は標準化質問票および面接によって調査した。 3種類のサイトカイン値には大きな個人間変動が認められ、またその分布は正に大きく歪んでおり、モードの数十倍以上の値を示す対象者も少なからず認められた。歪みの程度はIFN-γでとくに顕著であった。質問票で得られたアレルギーの現病歴・既往歴(呼吸器アレルギー、皮膚アレルギー)、また持続性のせき・たんなどの慢性呼吸器症状やその他の自覚症状、喫煙等の生活習慣関連要因などと血清サイトカイン量との関連を検討したが、明確なものは認められなかった。肺機能は本年度の数値を解析に用いたほか、1985年からの結果とあわせて、個々の対象者毎に年齢に対する回帰分析を行い、縦断指標と断面指標を得た。その推定の精度は予備的な解析の結果十分に高いものと考えられた。これらの肺機能指標とサイトカイン値の関連性を分析すると、いくつかの肺機能指標との間で有意な関連性が認められた。昨年度の測定対象者の結果をあわせて、解析の詳細を研究成果報告書にまとめた。
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