研究概要 |
本研究では、定期的な運動習慣を有さない更年期女性を対象として、ATレベルの心拍数をターゲットとした歩行を中心とするトレーニングを実施し、骨強度と閉経に及ぼす効果について検討した。 対象は、定期的な運動習慣を有さない、42歳から59歳の女性37名とした。閉経前群の平均年齢は46.3歳、閉経後群は54.8歳であった。閉経後群の閉経年齢は49.7歳、閉経後年数は5.1年であった。骨代謝マーカーはカルシウム調節ホルモンのPTH、CTとし、骨形成マーカーは BGP、Alp、Ca及び骨吸収マーカーはTRAP、Pyr、D-Pyrを測定した。また、E1,E2のエストロゲン分画を測定した。 骨密度の測定は右足踵骨のSOSとBUA、stiffnessを測定した。これらの測定は、1年間のトレーニング前後で2回行った。運動強度の設定は対象者ごとにATを算出し、これに相当する心拍数をターゲットとした。最高心拍数のおよそ65〜70%に相当した。運動指導は1回/週、60分/回で実際の歩行速度は約80m/分であった。統計的手法はStudentのpaired t-testを用いた。 対象者の特性をみると閉経前後の両群の形態関連指標には顕著な差は認められなかった。SOSへのトレーニングの影響は閉経後群で有意に高い傾向を示した。しかし、BUA、stiffnessでは閉経前後の両群とも顕著な差は示されなかった。骨代謝生化学指標をみると、骨形成マーカーのBGPでは有意ではないものの閉経後群で上昇傾向がみられた。また、骨吸収マーカーの各指標及びE1,E2には顕著差はみられなかった。これに対してPTHは閉経後群で有意な低下を示した。 これらのことから、加齢による骨量の低下やそれに伴う生化学指標の変動がみられなかったことは、歩行を中心とした今回の運動指導が骨に対する好ましい効果を反映したことが示唆される。
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