研究概要 |
虚血性心疾患の発症には血清脂質の他に、魚介類に多く含まれているn3系多価不飽和脂肪酸が関与しているといわれている。若年者は油脂、肉類の摂取が多く、魚介類の摂取が極端に少ないことから、魚介類の摂取を勧める指導と教育が必要である。本年度は虚血性心疾患の予防を目的として適切な魚介類の摂取方法を検討するため、短期大学食物栄養コースの女子学生39名を対象に介入実験を行った。女子学生を、背の青い魚摂取群(いわし,さんま,さば等)14名、白身魚摂取群(たい,たら,かれい等)15名、対照群(魚介類を摂取せず)10名に無作為に分けた。摂取群には1日に、80〜100gの魚介類を2週間摂食してもらい、摂取開始時、摂取終了時、終了2週間後に採血し、血清脂肪酸構成、血清脂質(総コレステロール、HDLーコレステロール、トリグリセリド)を分析した。 魚介類摂取2週間後、背の青い魚群については、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸には有意な変化は認められなかった。多価不飽和脂肪酸(P)は、摂取終了時に48.9%から51.7%と有意に増加した。特にn3系不飽和脂肪酸は、開始時6.0%から摂取終了時に9.7%と有意に増加した。エイコサベンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)も同様に増加した。n3/n6比は摂取開始時0.14から摂取終了時0.24へ増加した。いずれも、終了2週間後には摂取開始時の値まで減少した。白身魚群においては、ややn3系不飽和脂肪酸に増加傾向が認められたが有意ではなかった。対照群では大きな変動は見られなかった。また背の青い魚群においては血清脂質の中のトリグリセリド値(71→55mg/dl)の有意な減少を認めた。以上のことから、背の青い魚の摂取により、血清中n3系不飽和脂肪酸の増加、特にEPA、DHAの増加をもたらすことが認められた。次年度は有意差の認められた背の青い魚摂取群の対象者を増やして、再度摂取実験を行い確認する。
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