研究概要 |
我々は介護度を、要介護高齢者への直接所遇の介護業務における関わり度・困難度・必要度により数量化した。その介護度により、保健福祉機関職種別の介護支援における介護専門性を比較検討した。要介護度(老人保健福祉審議会、1996年)において、要介護社の介護保険制度の認定基準として策定されている。要介護度は、障害モデルによる自立度を主体に設定されており、要介護度だけでは、各々の個別の介護支援量と家族介護評価を判定するのは不可能である。我々は、それらを総合的に示す介護モデルによる介護度の開発と研究を展開している。 【対象・方法】介護度は、要介護者への介護支援業務における関わり度・困難度・必要度により数量化し統計解析した。1995年12月から西日本地区の保健福祉機関へ配票調査を行い、有効回収数1320部を得た。保健福祉種別の主体的に関わった要介護者として、(1)特養寮母394名(2)老健介護職員258名(3)特養の生活指導員24名(4)特養と老健の看護婦121名(5)ホームヘルパー170事例(6)訪問看護ステーション201事例(7)デイケア40名による総要介護者事例1208名から介護度を比較分析した。介護、看護、保健福祉職関連の介護支援業務を追加して、総計80項目を基にして、要介護者への介護支援内容の関わり度・困難度・必要度を調査しあ。その介護支援を更に6種類(生命18業務、生活18業務、情報17業務、医療15業務、末期4業務、在宅8業務)の主業務にまとめた。介護支援の程度を6段階評価による保健福祉専門職の回答によった。統計解析は、SPSS(SPSS 6.1J,Norusis SPSS Inc.)を使用した。 【結果】関わり度と必要度は、相関係数0.77(偏相関0.49)と非常に高く、困難度は関わり度とは0.57(-0.27)、必要度とは0.67(-0.02)とその偏相関係数は低かった。今回、その関係から、介護度=困難度*(関わり度+必要度)/2として数量化した。要介護度I〜IIIでは(1)情報(2)生活(3)生命が、要介護度IV〜IVでは(1)生命(IV〜IV)、(2)情報(IV)(2)生活(V)(2)医療(VI)が主に関与していた。それぞれの段階で主体介護業務が変化していた。 介護度は職種別には、特養寮母が生命、特養看護が医療、特養指導員は情報、老健介護は生命、老健看護が医療、ホームヘルパーと訪問看護とデイケアはともに情報が一番高値であった。特養寮母と老健介護職員の相関係数(0.845)と老健介護職員と老健看護が相関係数(0.883)と非常に高値となった。逆に特養指導員と特養看護の相関係数(0.125)が最も低値であった。在宅職種であるホームヘルパーと訪問看護は、相関係数(0.695)と中等度相関を認めた。 介護度のクラスター分析により、介護度の基本的属性と類似構造を検討した。大きくは、老健介護職員と老健看護の保健系・ホームヘルパー・特養指導員の地域在宅系・訪問看護の医療系・特養寮母の介護福祉系にそれぞれの担当する介護支援業務が反映されている4群に大別できた。 【結語】介護度の総合的指標により、要介護者の個別性や家族介護力に応じて介護認定をすべきである。介護度は、保健医療福祉連携と統合に対応した要介護者の効率的なケアマネジメントとケアプランによる介護支援システムの基本的構築に必須である。
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