プランクトン由来の自然毒である下痢性貝毒は二枚貝の中腸線に蓄積され、人に下痢を主要症状とする食中毒を引き起こす。下痢性貝毒の検査法はマウス致死活性を指標として定量する方法(公定法)が一般的に使用されているが、検査に時間がかかること(最低2日)、特異性に欠けること、感度が悪く測定誤差が大きいなどの問題点が多く改善が望まれていた。我々は下痢性貝毒の高感度迅速検出法を開発する目的で、筆者らが作製保存していた有機溶媒耐性モノクローナル抗体を使用してELISA法の基礎的条件を検討し新規ELISA法を確立した。また、本ELISA法によりホタテガイ60検体他11種類の貝類、計120検体の二枚貝の下痢性貝毒を定量し、その定量値を乳のみマウス法(下痢原性活性測定)および公定法(致死活性測定)による定量値と比較し有用性を確認した。以下に研究成果の概要を列記する。 1.新規ELISA法の確立 1)手法:試料1g→メタノール20mlにて抽出(3分)→抗体固相化プレートに試料調整液または標準液100μl添加→60分静置→洗浄→ペリオキシダーゼ標識オカダ酸溶液100μl添加→20分静置→洗浄→TMBZ溶液100μl添加→10分静置→反応停止→吸光度測定→定量 以上のとおり2時間で測定できる。 2)従来法に比べた利点:1)特異性が高く下痢性貝毒成分のokadaic acid(OA)、dinophysistoxin-1(DTX1)及びdinophysis-toxin-3(DTX3)を一括して定量できる。2)感度が高い(測定範囲:20〜150ng/ml)。3)再現性がよく変動率は約5%4)迅速(2時間)5)回収率(95〜100%が%高い) 2.各種二枚貝(11種類、120検体)についてELISA法による定量を実施した結果、公定法に比べ高感度に検出でき、乳のみマウス法及び公定法の定量値とよく一致し有用性が実証された。 以上の利点により、貝類の毒化モニタリング事業、食中毒事件の迅速解明、検疫業務、食品監視業務、毒化原因究明のための研究等に有効である。
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