エタノールの中枢神経作用からの行動異常は精神作動性の受容体であるGABAならびにNMDA受容体が関与している報告は多いが、受容体後の情報伝達系をふくめた神経作用全体での研究は少なく新たな知見が待たれている。また、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)多型がアルコール摂取量の抑制に寄与しているとされているが、中枢神経作用との関係については明らかでない。そこでこの研究ではエタノールならびにその代謝物の情報伝達系への作用点を検索の前に、ALDH多型の動物モデルの存在の検索と、ALDH多型のエタノール代謝動態に及ぼす影響について検討した。Wistar系雄ラットにおいて肝ALDH型分析を行ったところ、mitochondrial ALDHにおいて2型およびcytosol ALDHにおいて3型の酵素多型が認められた。これらの酵素多型別にエタノール1g/kgを静脈投与し得られた血中エタノール濃度曲線ならびに酢酸濃度曲線を薬物動態学的に解析した結果、エタノール動態解析において有意差は認められないものの、酢酸動態解析についてはmitochondrial ALDH多型間で有意差が認められた。したがって、Wistar系ラットにおいてALDH多型が存在し、その多型が酢酸動態に影響を及ぼすことが判明した。現在、ALDH遺伝子変異部の解析ならびに実験前診断法の確立を行っており、さらに中枢神経作用点の検索を検討している。
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