研究概要 |
1.腐敗組織中からの混合揮発性物質(灯油)の定性 10L容デシケーター底部で灯油蒸気を発生させ、その濃度が約1,000ppmになるように空気ポンプ等で調整した。このデシケーター内上部にWistar系雄性ラット(n=3)を入れ、15分間灯油蒸気を暴露した。直ちに頚椎脱臼によってラットを屠殺し、24時間室温放置した後、各体組織を採取した。これらの体組織について、n-ペンタン抽出を行い、抽出液を濃縮後、毛細管カラムを装着したガスクロマトグラフィー/質量分析装置(スキャンモード)に導入した。その結果、質量数57のモニターによって、リテンションタイム20分以内に灯油成分である炭素数9から16程度までの鎖状炭化水素が各体組織中に確認された。腐敗に基づく多少の妨害ピークの出現が認められたが、鎖状炭化水素の同定に大きく支障を来すことはなかった。 2.腐敗組織中からの混合揮発性物質(灯油)の定量 上記と同様の方法で各体組織約1gを抽出した。定量のための内部標準物質としてはo-キシレンd10を用い、ガスクロマトグラフィー/質量分析(選択イオンモニター)を行った。灯油成分定量の指標としてこれまで用いてきたトリメチルベンゼン類、すなわち、クメン、メシチレン、プソイドクメン、1,2,3-トリメチルベンゼンの4種を選択した。その結果、質量数120のモニターによってトリメチルベンゼン4種はリテンションタイム11分以内に出現し、妨害ピークによる影響は殆ど認められなかった。しかしながら、注入試料数の増加に伴ってピーク高の低下とピーク幅の延長が生じ、定量精度に若干の問題が生じた。これはおそらく毛細管カラムへの物質の吸着度合が変化することによるものと考えられるが、試料注入後は温度を上げ、カラム内をよく洗浄する等の対策が必要と思われた。このことについては最善策を現在検討中である。
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