培養膵臓実質細胞を用いた覚醒剤毒性の検討を目指し、初めに当年度においてMethamphetamineを用いて、ラット20匹に腹腔内に濃度を変化させながら高濃度投与し、覚醒剤がまずラット膵臓のどの部位において最も変化をもたらすかを検討した。その結果、12匹において先に肺に著明な出血をもたらすとともに脳内の小血管組織に、H.E.染色のみでも局所的に攣縮を生じ、次いでラットの内5例にではあるが散発的にこの小血管に壊死変化を起こし次いでやや時間を置き膵臓内の小血管に同様なる変化をもたらし、その後急速に広汎なる膵臓の実質壊死が生じることを認めた。特にこの脳内の変化が皮質、皮質下白質に及んでいるラットには膵臓の変化は軽度で、基底核に著明であるラットについては膵臓組織のほぼ全体において急速かつ広汎な壊死が認められた。よってまずこの壊死組織に隣接する小血管内皮細胞の電顕写真を作成したところ他の標本よりsurface infoldingが頻発している印象を認めたが、現在有意の差があるか否かデータを集積中である。かつラット膵臓実質細胞の培養に着手しているのであるが、ラットの膵臓はヒトとも腹膜の脂肪組織内に浸潤している形を取っているので、培養時に線維芽細胞あるいは脂肪細胞が混入しいまだに膵臓の上記壊死部位に隣接する膵臓実質細胞自体あるいは周囲の小血管内皮細胞の電子顕微鏡写真の精度が良くないのが実情である。よって最終年度においては当該血管内皮細胞壊死所見を含めて精度と特異性の高い写真作成に努め、覚醒剤に対する膵臓細胞内の最初の病態像に迫りたいと願っている。
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