研究概要 |
覚醒剤の膵臓実質組織に対する毒性の発現にどのような因子が関与しているかどうかを調べるために、ラットへの覚醒剤慢性投与実験をおこなうとともに、培養膵臓実質細胞を用いて以下の実験を行った。 1、培養膵臓細胞の調製:WistarKYラットから麻酔下に膵臓を摘出し、Langendorff灌流を行い、Collagenaseで灌流しadhesion法を試みた。 2、methamphetamine(MA)を培養液中に1×10^<-3>Mを加えたものと加えない対照群を培養皿で4時間培養した。 3、培養細胞は遠心して集め、電子顕微鏡下で検索した。 4、MAを14匹のラットに12週間慢性投与(1ml/kg,body)し、膵臓の変化を検索した。ついで免疫組織学的にα1-chymotrypsinantibodyを用いて検索した。その結果以下の興味ある知見を得た。 培養を試みた膵臓の実質細胞であるが、MAを加えた場合の細胞内の変化に多様性が大きく、今後のよりMA濃度を考慮した結果を追及したい。上記の慢性投与を含めた所見であるが、今回の研究から覚醒剤投与はまず膵臓を初めとする肺臓、心臓等の臓器に分布する小血管の内皮細胞を障害するのではないかということが示唆された。この知見は覚醒剤の慢性中毒患者において異様なる多彩な精神神経症状を呈し、また脳の血流障害あるいは小出血が関与しているのではないかという最近の他の報告とも相関するのではないかと思われた。法医学の現場において覚醒剤中毒についてより一層の詳細な実験を計画したく考えている。
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