コカインをマウスに投与し、アルコール嗜好性・脳内モノアミン含量・肝アルコール代謝機能について測定することにより、以下のことが見いだされた。 1、コカイン単回投与により、近交系マウスのアルコール嗜好性は減少した。しかし、コカイン投与1日後には回復したことから、アルコール嗜好性減少はコカインの急性効果であることが示された。 2、コカイン単回投与において、脳内ドパミン含量はアルコール前処置群で、コカイン投与2時間後のみ全脳、大脳皮質で増加したが、セロトニン、ノルアドレナリン系には変化は認められなかった。コカインによるアルコール嗜好性の減少は、脳内モノアミンのドパミン系が関与していることが示唆された。 3、コカイン1週間連続反復投与により、アルコール嗜好性は減少し、投与中止後、アルコール嗜好性は回復した。コカイン反復投与においては、アルコール嗜好性への長期的な影響は認められなかった。 4、コカイン単回、反復投与は血中アルコール消失率(in vivo)、肝ADH・ALDH活性(in vitro)に変化を及ぼさず、コカインによる肝アルコール代謝機能への影響は認めなかった。 アルコールなどの薬物依存形成機序については、中脳辺縁系から基底核を経て前脳に至るドパミン神経系と縫線核セロトニン神経系から成る脳報償系の関与が考えられており、今回の研究結果から、コカインによるアルコール嗜好性の低下は、前者がより強く関与していることが示された。
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