近年アルコールの病的摂取行動であるアルコール依存症が大きな社会的問題となっている。神経依存性薬物であるコカイン乱用事例は覚醒剤乱用事例と比べて、本邦においては統計的に非常に少なかったが、最近、アルコールとコカインの併用により惹起される多様な薬理作用を経験しようとする多剤乱用事例が増加傾向にある。 コカインとアルコールの相互作用を行動薬理学的に検討する目的で、近交系マウスC57BL/6Jを用い、コカイン単回投与及び反復投与によるマウスのアルコール嗜好性の変化、そして、コカイン投与時のアルコール嗜好性に影響を与えるアルコール代謝系、脳内モニアミン系の変動について研究を行い、次のことが明らかになった。 1.コカイン単回投与により、近交系マウスのアルコール嗜好性は減少した。しかし、コカイン投与1日後には回復したことから、アルコール嗜好性減少はコカインの急性効果であることが示された。 2.コカイン単回投与において、脳内ドパミンはアルコール前処置群で、コカイン投与2時間後のみ全脳、大脳皮質で増加したが、セロトニン、ノルアドレナリン系には変化は認められなかった。コカインによるアルコール嗜好性の減少は、脳内モノアミンのドパミン系が関与していることが示唆された。 3.コカイン1週間連続反復投与により、アルコール嗜好性は減少し、投与中止後、アルコール嗜好性は回復した。コカイン反復投与においては、アルコール嗜好性への長期的な影響は認められなかった。 4.コカイン単回、反復投与は血中アルコール消失率(in vivo)、肝ADH/ALDH活性(in vitro)に変化を及ぼさず、コカインによる肝アルコール代謝機能への影響は認めなかった。
|