研究概要 |
Dihydrotestosterone(DHT)の心臓系に及ぼす影響を検討するため、健常ラットを対象にその投与実験を行なった。あらかじめ精巣あるいは卵巣除去を施した12週齢の雄雌ラットに1.6mg/100g/dayの割合で連続7日間,DHTを皮下投与し、対照として非投与の同週齢の精巣あるいは卵巣除去ラットを用い、ペントバルビタール麻酔下で循環機能および呼吸機能を調べ、その後、心臓を摘出してその重量を測定した。 雄の去勢ラットでは、DHT投与による心重量への影響はつぎの通りであった。すなわち、DHT投与群の全心室重量と右心室重量は、その非投与群に比べて高い値を示した。体重比や全心室重量比に換算しても同様な結果であった。左心室重量に関してはDHT投与群は体重比や全心室重量比において減量傾向がみられた。 心機能においては、心拍数はDHT投与群と非投与群では殆ど差がなかった。動脈圧に関しては、DHT投与群において上昇傾向がみられた。しかし、DHTにより左心室重量の増加がある程度抑制され、systemicな血圧は低下するように予測されたが、頚動脈圧は上昇傾向をとり、さらに検討を要した。呼吸機能では、呼吸数は両群の間で差がなかったが、呼気CO^2ガスではDHT投与群の方が低い値であり、換気が高まった。 雌の去勢ラットにDHT投与しても、心重量への影響は雄ラットと同様な結果を示した。また循環機能も雄ラットと同様であった。呼吸機能では呼吸数は雄ラットと同様であったが、呼気CO^2ガスでは雄ラットとは逆にDHT投与で高い傾向がみられた。 したがって、DHTには特に右心肥大を惹起させる作用があることが判明した。さらに、今回の結果を踏まえ、DHT投与量の増加を計り、顕著な効果の基準を検索し、この時点で充分データの得られなかった各心室部位の心筋蛋白質の電気泳動分析および高脂血症または肥満ラットにおけるDHTの影響などを検討する予定である。
|